ここは地球。 地上でのミッションで刹那の潜伏先であった、経済特区日本のとあるカフェで、眼鏡をかけた美少女とも美少年とも言える濃紫髪の者が退屈そうにガラス越しのカウンターに座っていた。 周囲の男達は声をかけようかとソワソワしている中、渦中の人の携帯が鳴った。鳴ったとは言え、マナーモードになっている為バイブレーションではあったが。 携帯を一瞥して相手を確認し、彼の人は「はい」と出た。周囲の男達はその声を聞き、がくりと肩を落とす。それもそのはずだ。そのピンクの可愛らしい唇からは男性とはっきり分かる声が聞こえてきたからだ。 「キミはいつも時間通りに来た試しがないな。そんなに僕との待ち合わせは億劫なのか?後5分待ってやる。さっさと来い。5分以内に到着しなかった場合、僕は帰るからな」 その言葉とは裏腹に、表情はとても明るく頬はうっすらと赤みが差して、電話の相手は間違いなく恋人か思い人であると確信させた。 携帯を無造作に閉じ、くすりと微笑むと目の前の窓ガラスがノックされた。 ふと顔を上げると、濃紫の美少年は目を見開き、青ざめた。言葉が出てこず、口だけが金魚のようにぱくぱくさせて狼狽えていた。 『そこで待っていろ』 窓ガラス越しの少年は唇を動かし、店内へ誘う扉の方へ向かった。 青ざめた少年は、この場から逃げたいと慌てて席を立った瞬間、 「逃げるな、ティエリア」 逃げようとしていた濃紫の美少年・ティエリアは、その言葉で立ち止まった。 「ぼ・・・僕は、私は・・・」 混乱して一人称もままならない。電話の相手は口角が上がっている。いつもはあまり表情を変えない人物ではあるのだが、ティエリアの表情を見て嬉しくて仕方が無い様子である。 「お前、憎まれ口を叩きながらそんな顔してたんだな」 顔を真っ赤にして狼狽するティエリアを、嬉しそうに覗き込む電話の相手をティエリアは睨み付けた。 「刹那・・・一体いつから見ていたんだ・・・」 力一杯睨んでいるのにも関わらず、刹那と呼ばれた電話の相手は嬉しそうにしている。逃げられないと思ったティエリアは、脱力感で一杯だった。 「電話をした時には、本当に近くまで来ていたんだ。カウンター越しにティエリアの姿が見えて、電話越しの口調は怒ってるのに顔は怒ってないし、普通は疑問に思うだろう?だから見ていた。いつも憎まれ口叩きながらこんな顔してるのか、と思ったら嬉しかった。演技が巧いな。流石はマイスターと言ったところか?」 嬉しそうにニヤリと笑う刹那にティエリアは脱力しているとは言え、精一杯の強がりを言ってみる。素直になれないのは、性格上仕方が無い。まぁ、それも刹那にはお見通しなので、全く以てティエリアの努力は空回っているだけなのだが。 「・・・・・・・・・・・・茶化すな。いつもはこんなではない」 「そうか?だがもう遅い」 ティエリアは頑張って力一杯睨み付けてみたが、言葉通り遅いようだった。 おしまい。 |