出会い編


「今日から仲間になるアレルヤ・ハプティズムよ。みんな仲良くしてね」
ブリーフィングルームに集められたクルーに、スメラギ・李・ノリエガが明るく紹介した。
「キュリオスのガンダムマイスターになりました、アレルヤ・ハプティズムです。分からないことだらけですが、戦争根絶の為に頑張らせて頂きますので、みなさんよろしくお願いします」
軽く会釈をし、顔をあげるとピンクのカーディガンを着て、紫色の肩で切りそろえた髪型の少女とも少年ともどちらとも思える人物と目が合った。 その者は軽く会釈をし、その場を去っていった。
「あの・・・あの子は?」
「あぁ、ヴァーチェのガンダムマイスター、ティエリア・アーデよ。
 ・・・全くあの子ときたら全然打ち解けようとしてくれないんだもの。アレルヤ、仲良くしてあげてね」
ため息混じりに微笑んでスメラギが言った。
「了解しました」
アレルヤ・ハプティズムも笑顔で答えた。
まだまだ増えるというクルーは現在自分を入れて8人。
イアン・ヴァスティ、JB・モレノ、リヒテンダール・ツェーリ、クリスティナ・シエラ、フェルト・グレイスと挨拶を交わした。
ガンダムマイスターは後2人いて、その他に砲撃士が明日来るそうだ。
アレルヤは挨拶が済んでから館内を探検することにした。



「キミではそこに入ることは出来ない」
誰もいないと思っていたところに声をかけられ一瞬驚くも、直ぐに冷静さを取り戻し振り返る。
先程スメラギ・李・ノリエガから紹介を受けたとき、彼は会釈をしただけだったので外見だけで言うと女の子のように思えたが、声を聞く限りは男性だな、とアレルヤは思った。
「あ、ティエリア・アーデ。先程はどうも。
 何故ここには入れないんだい?」
「権限が無いからだ」
ティエリアは冷たく言い放つ。
「ふーん。スメラギさんとか、偉い立場の人しか入れないの?」
「質問が多いぞ、アレルヤ・ハプティズム。スパイならスパイらしく自分で探し出せ」
ティエリアはそう言い放ち、その場を後にしようとアレルヤに背を向けた。
「ちょ・・・!なにそれ?スパイってどういうこと?」
「どうもこうも、キミが一番知っていることでは無いのか?
 俺が知っているのはキミがソレスタルビーイングのガンダムマイスターに選ばれたこと、人革連から来たスパイであるということ、もう一人の人格があるということ、それだけだ」
「・・・それが本当ならソレスタルビーイングは相当おめでたい集団じゃない。スパイと分かっている人間を仲間に引き入れたら、自分達の行動が漏洩して殲滅することなんて子供でも分かる事だよ。」
「まぁ、そうだな。だがこれも計画の一部だ。今のところキュリオスのパイロット適正が最も高いのはキミであり、人革連の超人機関研究所出身で、超兵の被験体であることも分かっている。だから誤魔化さなくても良い。キミを捕まえて脳をいじくって人革連の情報を引き出す事も考えてはいない。そんなことしなくても我々にはヴェーダとスメラギ・李・ノリエガの戦術予報があるから特に必要は無い」
「・・・そう。皆も知ってる事なの?」
「皆は知らない。知っているのはヴェーダと俺だけだ」
質問はこれで終わりか?とティエリアは不機嫌に問う。
「なんで知っていて・・・情報を入手するためでもなく・・・僕を組織に入れたんだい?」
アレルヤには分からなかった。
何故自分をスパイと知りながら何も言わないのか、と。
「先程も話した通り、現時点でキュリオスのパイロット適正能力が優れているのはヴェーダが推奨するキミだけだ。そしてこれは全て計画の一部にしか過ぎない」
「計画って・・・」
「最初に説明があっただろう?エージェントからイオリア・シュヘンベルクの計画の説明は受けていないのか?」
「それは・・・武力による戦争の根絶・・・」
「そうだ。その計画にキミは無くてはならない存在だ。だからガンダムマイスターに選ばれた。ただそれだけだ」
「じゃあ僕がソレスタルビーイングの情報を漏らしてもそれは計画なの?」
「そうだ。だが、このプトレマイオスとガンダムの中では人革連と連絡を取ることは出来ない」
「何故?」
「さっきから質問ばかりだな。まだ説明を受けていないのか、アレルヤ・ハプティズム。マニュアルにも載っているハズだが、GN粒子が散布されている以上、電波の発する電子機器類は全て無効だ」
「あ、ごめん。明日説明を受ける事になっていて、プトレマイオスには着いたばかりでマニュアルにも目を通していないんだ」
「それでもスパイか・・・」
はぁ、と溜息を漏らし、まあいい、と続けた。
「だからキミが情報漏洩出来るのは、プトレマイオスとキュリオスから降りたときだけだ。そうなってくると中々情報漏洩が出来ない。人革連からキミが謀反を犯したと思われる日も遠くは無いな・・・」
「・・・それも計画の一部?」
「そうかもな」
アレルヤは失笑した。
そういうものも含めての計画なのか、と。
ティエリアはうんざりしながらもういいか、と聞いた。
「うん、ありがとう。僕は実は人革連のスパイとはいえ、あの組織には少々うんざりしていたんだ。だからあそこから外に出たくて、逃げたくてここに来たっていうのもある。小さい頃も逃げようとして・・・結局途中で捕まっちゃったしね。
 ・・・人革連から見放される日を心待ちにしてるよ。
 あ、そうそう。本気で戦争根絶なんて出来るとは思えないけど、戦争は嫌いなんだ。終わらせる手助けが出来るなら、って本当に思ってるから全力は尽くすよ」
アレルヤの言ってる事は本当なんだろう、と思えるほどの穏やかな笑顔でそう言った。
「そうか。期待しているぞ。どうせヴァーチェと組まされるのはキュリオスだからな。足を引っ張られるような事があればキミを撃つから覚悟してくれ」
まっすぐな目でティエリアはアレルヤを見た。
「お手柔らかに」
とスメラギ・李・ノリエガの『全くあの子ときたら全然打ち解けようとしてくれないんだもの』という言葉を思い出しクスっと笑った。
「もし良ければだけど、キミが色んな説明をしてくれないかい?面倒かな・・・。でも僕としては僕の事を色々知っているキミの方が色んな話が出来て良いかなって思うんだ」
どう?と笑顔でティエリアの顔色を伺った。
ティエリアは深い溜息をつき面倒くさそうに
「了解した。明日の説明から訓練や色々と一緒に行動してやる。
 その代わり先程も言った通り邪魔するなら容赦無く撃つからな」
本当に容赦なく撃たれそうだ、とアレルヤは思った。




















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